その昔、秋の頃、大王崎の東北(鬼門)の大王島に,海神八大竜王に追われたダンダラ法師という大男がおり、波切の浜にやってきては神通力で雲を呼び、嵐を起こして暴れていました。

 砂浜は怒涛に見舞われ、そして帰るときには必ず里の美しい娘を順番にさらっていくため、里人の心は日ごとに暗くなってきました。

 ある日、そのダンダラ法師が野名の海岸にたち、、ふと足元を見ると、谷間に一軒のとま屋があり、中で美しい娘が一生懸命ワラムシロを編んでいました。

 実はこの娘、産土神・葦夜権現の化身だったのです。ダンダラ法師はこのことを知らずに、娘に向かって「お前の作っているものは何か?」と聞きました。すると娘は静かな面持ちで「これは千人力の村主の履くわらじです。」と答えました。
 ダンダラ法師は驚きました。こんな大きなわらじを履く大男がいる里へは侵入できないと、方角を変えて、大里の磯浜の島に跳び移りました。

 (この島には畳み一畳丈の足跡型のくぼみが残っており、ダンダラ島と名付けられました。)

 次に里を見ると、浜衆の網納屋の前で数人の漁師達がイワシ網の繕いに精を出していました。その向こうには大きなボテカゴが置いてありました。
 この漁師達も産土神の化身だとは知らないダンダラ法師は、同じようにその漁師たちに向かって「それは何に使うのだ?」とたずねました。

 年寄りの一人が穏やかな笑顔で網を指差し、「これは村主の下帯(ふんどし)じゃ。」というと、ダンダラ法師は急に身を震わせながらボテカゴに目をやり、今度は、「あれは何だ?」と聞きました。
 里人はここぞと力を入れて「あれこそ千人力の使う飯箱じゃ。」と答えました。聞くや否やダンダラ法師は肝をつぶし、一目散に逃げ帰ってしまったということです。
 それからは海はなぎ、秋晴れの日が続き、浜は大漁でにぎわったということです。
 それ以来、波切では毎年九月申の日に大わらじを海に流して大漁を祈っています。

わらじ祭りの起こり
ダンダラ法師の物語

志摩市大王町ダンダラボッチ公園の説明板より転記