麦崎の南方の海中に、海女の間で竜宮井戸と呼ばれ、深く、碧く、澄んだところがあり、その付近では、海女の作業をしないことになっている。
  昔々、この地がわずか四十軒ほどの小さな村であった頃、九人の海女がこの竜宮井戸のあたりで作業していたが、いつになっても帰らないので、村人総出で捜したが、九つの桶だけが波間に漂っているだけで海女の姿はなかった。
  

  村人は九人の海女が竜宮に連れて行かれたと信じ、それ以来、旧六月十三日には九人の海女の命日として「海女人日待(あまどひまち)」と称し海の作業を休む仕来りとなっている。
  この日には、小さな桶を九個作り、これに白米三升三勺で作った白餅一重、二個づつを入れ、竜宮井戸の対岸である麦崎の直下「竜宮ぼち」に供え、海の神をお祀りし、九人の海女の冥福を祈っている。

注:上の伝説は麦崎灯台近くにある「麦崎」の説明板(志摩町作成)のものをそのまま載せています。