「おわけさん」の起源

  
  伊勢市の旧神領内の地域では、伊勢神宮の保護のもと、外部勢力の侵略をまぬがれてきました。 そのため、今でも他の地方では失われた古代の文化が残っています。

  この「おわけさん」という祭りも弥生時代の豊穣の祈りを偲ばせる内容で、田の神様を送り迎えするお祭りです。

  明治の中頃までは、高向以外の宮川流域の各地に於いて行われていたようですが、今では高向地区以外には見られません。これと似た祭りを、中国の雲南省やミャンマーのカチン高原で見かけたという情報もあります。

  すなわち、この祭りは、未だ神様に名前が無く、まして神社という固定した祈りの場所も無い古い時代に、 そして灌漑も無く、特別な肥料も無く、自然の恵みだけが農業を支えていた時代、田近くに藁屋をしつらえ、そこへ神様をお招きし、その年の豊穣をひたすら願って、祈ったものと考えられます。

  そうした時代の名残が、今日の「おわけさん」ではないでしょうか。
(文責きらり千選、北村武久氏にお話していただいたもの)